特別招待講演①

貴家 仁志 (東京都立大学 システムデザイン学部 教授)
《APSIPA Japan Chapter主催》
題目: 真実の可視化を操作する:AIを騙す,データ・AIを守る
講演概要:  我々は、多くの情報を視覚によって獲得している。一方、画像や映像をAIによって分析して、その結果を活用する研究が盛んに行われている。しかし、両者の結果は必ずしも一致せず、人の視覚的認知とAIの認知の違いが注目されている。本講演では、この両者の認知の違いという視点から、急速に発展を続けているAIの危うさとその対策について紹介する。
 例えば、入力画像に微小な摂動を加え学習済みのモデルに誤った予測をさせる、敵対的事例(Adversarial Example)と呼ばれる攻撃がある。敵対的事例は、人による視覚的認知が困難であるにもかかわらず、自動運転などの現実世界にAIを応用する際には大きな脅威となる。また、乱数を用いてランダムに変換された画像を、AIは分析可能であることが明らかになった。このことは、人間が視覚的に認知できない形で再定義された画像を、AIは分析可能であることを意味する。この研究は、画像中に含まれるプライバシー情報を保護した形式での画像分析を可能にすると同時に、敵対的事例の解決に対しても新しい視点を与えている。さらに、学習済みのモデルを不正使用から守る、アクセス制御法としても期待されている。
 本講演では、これらの最新の研究成果の紹介に加え、音声や音響信号への展開と今後の展望について紹介する。

参照
[1] Encryption-Then-Compression Systems Using Grayscale-Based Image Encryption for JPEG Images, IEEE TIFS, 2019.
[2] Block-Wise Image Transformation with Secret Key for Adversarially Robust Defense, IEEE TIFS, 2021.
[3] Privacy-Preserving Image Classification Using an Isotropic Network, IEEE MultiMedia, 2022.
[4] An Overview of Compressible and Learnable Image Transformation with Secret Key and its Applications, APSIPA TSIP, 2022.

特別招待講演②

安田 浩保 (新潟大学 災害・復興科学研究所 准教授)
題目: 観測ビッグデータに基づく河川の機構解明と制御
講演概要:  近年、各地で甚大な被害を伴う水害が発生している。洪水時の河川においては、大量の水とそれを駆動源とした土砂が輸送される。洪水時の河川は、堤防から水が溢れる以外に、河道においては、その底面の高さが活発な土砂輸送のためにメートル規模で変動したり、国内の河川でも人工的に直線化された河川が一度の洪水ではっきりと蛇行するなどの大規模な変動を呈する。このような変位が大きな変動は、橋梁の流失など被害の拡大の要因となる。これまでに、河川の物理の機構を解明する研究としてモデル駆動解析が実施されてきた。しかし、その解明には至らず、21世紀の現在においてもなお不明なことが多い。その要因の一つとして、河川の物理の解明に必要となる測定手法の未確立が挙げられる。この問題に対し、模型実験と実河川のそれぞれにおける観測ビッグデータの測定法の開発を行ってきている。また、これらの観測ビッグデータのデータ駆動解析を世界で初めて実施し、不明だった河川の物理を解明するとともに、その解析結果に基づき新たな河川の物理の認識の方法を得るなどの成果を得てきている。さらに、信号処理理論と素粒子実験物理学の研究者と異分野融合の研究体制を構築し、かつて構想されたこともない洪水時の流れを制御するためのCyber Physical Systemの開発を行ってきた。本講演では、これらの研究成果を紹介した上で、2020年に開始された新たな治水の取り組みである「流域治水」に対してこれらの成果をどのように活用するかについて紹介する。

参照
[1] Capture method for digital twin of formation processes of sand bars, Physics of Fluids 34 (034117) 2022年
[2] Flow-Path Fitting From Images With Fourier Basis For River Health Assessment, Proc. of the IEEE International Conference in Image Processing (IEEE ICIP 2022) 2022年
[3] On the Migrating Speed of Free Alternate Bars, Journal of Geophysical Research – Earth Surface 2022年

特別招待講演③

本間 希樹 (国立天文台 水沢VLBI観測所所長 教授)
題目: 電波干渉計を用いた巨大ブラックホールの撮像
講演概要:  2019年4月、楕円銀河M87の中心にある巨大ブラックホールの影を初めて捉えた写真が公表され、また本年5月には、私たちの住む天の川銀河の巨大ブラックホールの写真も公開された。これらの写真は国際共同研究プロジェクト、「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」が撮影したものである。このプロジェクトでは、世界中の数百人もの研究者が協力して世界各地の電波望遠鏡を組み合わせ、地球サイズの望遠鏡を合成して人類史上最高の視力を実現している。得られた写真には、どちらの天体でも中心に穴の空いたドーナツ構造が写っており、その中心の暗い部分こそが、「光すら飲み込む暗黒の天体」であるブラックホールを影絵としてとらえたもので、ブラックホールの存在を初めて視覚的に示すものである。
 ブラックホールはアインシュタインの一般相対性理論によって今から約100年前の1916年に理論的に予言されたが、当時はアインシュタイン本人も含めて誰もがその特異な天体の存在を信じない、極めて懐疑的な存在であった。一方、それとは別に100年前の天文学者たちは、ブラックホールの有無と関係なしに、「銀河の真ん中には何があるのか?」という疑問を持って研究を行っていた。その後の研究の蓄積で、ブラックホールの存在や、銀河の中心が巨大ブラックホールであることは確実になっていたが、それにも関わらずブラックホールの存在を示す“視覚的な証拠”は存在しなかった。EHTによって得られた、銀河の中心の巨大ブラックホールの写真は、ブラックホールの存在を視覚的に決定づけるとともに、銀河の中心が巨大ブラックホールであることも示すものであり、100年もの長きに渡って人類が解明に挑んできた2つの疑問に決着をつけた。
 本講演では、EHTのメンバーでもある講演者が、EHTによるブラックホール撮影の観測や結果、その意義について解説するとともに、画像解析において用いられる信号処理の手法についても紹介する。

参照
[1] EHT Collaboration, Astrophysical Journal letters, 875 (2019) L1
[2] EHT Collaboration, Astrophysical Journal letters, 930 (2022) L12

特別企画①

企業ワークショップ (MathWorks社)
題目: MATLABで試す***? ~作曲、AI、ラズパイ実装~
セッション概要:  MATLABは、信号処理、制御、データサイエンス、組み込み実装等、幅広い用途で古くから親しまれてきました。このランチョンセッションでは、音階を作って曲として再生したり、AIロジックを作ってRaspberry Pi上で動作させるなど、皆さんの身近な題材をMATLABならではのデモを交えて取り上げる予定です。長年のヘビーユーザから、「MATLABってなに?」という学生さんまで、ランチと休憩を兼ねて誰でもお気軽にご参加ください。主なトピックは以下のとおりです。
・意外と”はまる”:音階の定義とメロディーの再生
・信号処理を生かす:データセントリックAIとMATLAB
・すぐに試せる:振動センサーとRaspberry Piを用いた状態監視

特別企画②

企画セッション
題目: 信号処理がもたらす先進的環境モニタリング
オーガナイザ: 村松正吾(新潟大),岩橋政宏・原川良介(長岡技科大)
セッション概要:  観測対象となる環境の多様化や計算機センシング技術の発展に伴い、環境モニタリングのための信号取得と信号処理のニーズは日々高まっている。このような背景から、音や画像をはじめとした環境から得られる大量のデータの解析や状態予測の性能向上は重要な課題となっている。本企画セッションは、環境モニタリング信号の取得、解析、圧縮のための信号処理と機械学習に焦点を当てた先進的AI/IoT技術のトピックスで構成する。理論、設計、応用をバランスよくカバーし、多面的な議論を深める場とする。

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