プログラム
オンデマンド配信
本地方会では、オンデマンド配信を行います。地方会開催の1ヶ月前から3ヶ月以上視聴可能となっております。
ぜひご視聴ください。概要は以下の通りです。
【配信期間】2022年10月20日(木)〜2023年1月31日(火)
参加者専用ページ上で、順次配信動画をアップ予定です。
【注意】視聴のためには参加登録が必要です。参加者の皆様へをご参照ください。
オンデマンド限定コンテンツ一覧
特別対談
【司 会】吉本 清巳(奈良県立医科大学総合医療学)
【ゲスト】安東 範明(奈良県医師会長)
ザイレ 暁映(法相宗大本山 興福寺 録事)
11月20日会期当日の特別講演の座長安東先生と講師ザイレ暁映さんの特別対談です。
お二人の新しいことへの挑戦、それぞれのご専門、今後のビジョンなどについて熱く語っていただいております。
オンデマンド限定教育講演
多職種対象
1. 地域医療のブレイクスルー「~全職員が主役の脱専門化志向~」
【演者】四方 哲(京都府山城北保健所長)
【概要】
三重県と奈良県との県境で高齢化が進む山間へき地にある三重県立一志病院は、全職員が 100 名程度の小規模な公立病院です。同院に関して「県立病院としては廃止し、ニーズに応えられる事業者へ移譲する・・・しかし、当分の間、県立県営とする」という民間移譲案が 2010 年三重県県立病院改革基本方針で示されました。そこで病院職員は「夢プロジェクト」という自主組織を発足し「安心してこの地域で生活し続けられる医療を提供し、全国の医療過疎を解決する病院のモデルになります」というビジョ ンを創り、全職員が取り組む 6 戦略 18 目標を決めて活動を開始しました。2017 年、三重県議会において三重県知事は「人口減少が進む地域においては総合診療医が重要であり・・・一志病院の民間移譲は困難である」と民間移譲の撤回を表明しました。この間に病院職員が考えて取り組んだ内容のごく一部をご紹介します。
2. プライマリ・ケアの現場で役に立つ感染症の話
【演者】笠原 敬(奈良県立医科大学 感染症センター 教授)
【概要】
新型コロナウイルス感染症によって「感染対策」に大いに注目が集まりました。本来「感染対策」は、人類がより安全に生活していくために長い年月をかけて磨き上げてきた「スキル」だと思います。しかしコロナ禍では「感染対策」が、色々なものを延期や中止に追い込む「悪者」だと思われていないでしょうか。講演の前半では、院内感染と医療関連感染症の違いや、感染対策とは何か、どうあるべきかについてお話しします。また後半では薬剤耐性菌とその対策の現状についてお話しします。特に薬剤耐性菌対策では、患者の一番近くにいる看護職の方々に期待しています。本講演を通して、「感染対策」や「感染症診療」はどうあるべきか、皆様と考える機会になれば幸いで す。
3. ACPとは——ミクロな注目がマクロを描く
【演者】佐々木 慈瞳(臨床宗教士)
【概要】
患者さんのいのちは患者さんのものであり、治療や療養の方針は当然、患者さんの意思によって決められる。そのために必要な情報を収集し、分かりやすく説明しながら、治療の段階に応じて意思決定を援助するのが医療者の務めであり、Advance Care Planning である。
そういう説明は分かります。しかし臨床の場で「ACP」と言われても、いつ、誰が、どのように取り組むか、何を記録し誰と共有するか、実践は難しいという医療者の声をよく聴きます。
緩和ケアチームの心理師として活動しながら、私は多くの患者さんに導かれ、育てられてきました。何を目指しどう生きるか、自分独りで方向を決めたわけではありません。人と人との対話を通じて、誰もが自分を見出し作り上げていく。その過程の最終場面が ACP なのではないか。
医療者-患者、援助者-被援助者、という関係ではない視点から、ACP について考察してみました。ご意見がいただけるとありがたいです。
4. 災害時医療の昔と今、そして未来:プライマリ・ケアに携わるあなたこそ、災害時医療の4番バッターだ!
【演者】中山 伸一(兵庫県災害医療センター 名誉院長)
【概要】
1995 年、阪神・淡路大震災は災害対策・対応におけるさまざまな問題を教訓として残した。被災の医療機関では医療の需要と供給の著しいアンバランスが発生したが、当時情報伝達の欠如から解消させるこ とはできず、Preventable Death の発生を招いた。その反省と教訓をもとに過去 27 年間に、災害救急医療情報システム(EMIS)、災害拠点病院、DMAT、災害医療コーディネーターなどの整備が進み、「打っ て出る医療」が浸透してきたといえる。
その進歩の中で見えてきた課題も多い。災害拠点病院を含む医療機関、そして保健所の災害に対する様々な脆弱性、発災時の EMIS 発信(入力)率の低さ、DMAT に頼り過ぎとも言える災害対応などが指摘できる。確かに発災急性期の初動(野球でいえば一番バッター)はまず DMAT が担当するとして、亜急性期以降にその活動を引き継ぐべき医療・保健チームとして JMAT、DPAT、JRAT など様々な分野のチームが災害時に積極的に可動するようになってはきたが、その教育や派遣体制はまだまだ未完成である。それぞれの分野の医療・保健チームがそれぞれの立ち位置と機能・役割を相互理解しつつ、長期的視野に立ってシームレスに活動を引き継いで平時体制に移行させて行くまでにはとても至っていない。それでは、想定されている南海トラフ地震級の大災害時に、命を助け健康を守るにはとてもおぼつかない。
いずれにせよ、災害時医療対応は総力戦である。わが国の災害医療システムの現状を理解した上で、災害時医療にもっと積極的に取り組んで欲しいと私が強く望むのは、他ならぬ総合診療医をはじめとする「プライマリ・ケア」に携わる様々な職種の方々だ!新しい患者が多数の発生するするとともに、もともと持病のある方のコントロールが難しくなり健康が脅かされるなど幅広い患者に対応する能力が求められる災害。スペシャリティーが何であろうと、自然災害時に起動するシステムに対して平時から学ぶ努力とその一員であろうとする姿勢が、この災害列島に暮らす医療人として何より重要であることを強調したい。
5. 摂食嚥下障害のリハビリのため、その評価と訓練方法について
【演者】竹市 美加(訪問看護ステーションたべる )
【概要】
日本の 75 歳以上の高齢者数は、2025 年には 2000 万人を超える勢いで増加し続けており、2055 年には 75 歳以上の全人口に占める割合が、25%を超えると予測されています。超高齢社会となった我が国では、ある調査によると「自宅での療養を希望する人」が 60%以上を占めると報告されています。要介護状態になっても、自宅や子供等家族の家での介護を受けながら、自宅での暮らしを希望する人が 40% を超える。在宅訪問看護の現場では、DPC 導入による入院期間の短縮に加えて、コロナ禍の面会制限もあり、早期に自宅療養を希望する人が多く、在宅医療を必要とする方が増えています。そのため、国民のあらゆる健康上の問題、疾病に対し、総合的・継続的、そして全人的に対応し、高齢者や障害を持つ方が安心して地域で生活できるための支援、プライマリ・ケアの重要性が高まっています。食支援においても、様々な疾患や複合した病態で、重度摂食嚥下障害を有した症例も多く、摂食嚥下障害への対応だけでなく、全身状態の安定を図り、生活を整えるなどの包括的ケアが必要となり、プライマリ・ケアにおいても重要なケアの一つとなります。
訪問看護ステーションたべるでは、地域での食支援を強化し、その人らしい生活を守るためのサポー トをしています。療養期だけでなく、慢性期からターミナル期と様々な病期、病態に合わせ、通常の看護ケアに加え、KT バランスチャートを用いた包括的視点での評価、食事環境の調整、食物形態の調整、摂食嚥下リハビリテーション、栄養管理など、多岐にわたる食支援を行っています。また、在宅療養者は、ご家族だけでなく、ヘルパーの利用やデイサービスやデイケアなど施設を利用する方が多く、他事業所や施設との連携も必須となります。今回の教育講演では、当ステーションで行っている包括的食支援について、事例を踏まえながら紹介させていただきます。
6. 明日からできる多職種視点のポリファーマシー対策
【演者】北 和也(やわらぎクリニック )
【概要】
超高齢時代といえる現代、多疾患併存(マルチモビディティ)に伴うポリファーマシー状態の患者さんに出会うことは、決して珍しくなくなった。外来にせよ在宅にせよ、病院であれ高齢者施設であれ、見かけない日はないといえる。そしてそれに対峙すべく、ポリファーマシー対策についても、個々あるいは医療機関毎で行う機会が増えているのではないだろうか。ただ、よく見聞きする対策というのは、医師・薬剤師による医学・薬学的アプローチであり、それに終始していることが多い。結果、医師・薬剤師以外の職種が活躍していることは稀であり、非常に勿体無いと日々感じている。疾患や薬剤のわりと マニアックな知識を持ち合わせていなければ対策できないという固定観念を持つ医療・介護職は少なく ないだろう。しかしながら、それは誤解である。医師・薬剤師が持ち合わせないような多角的な視点、特に心理・社会的な視点の需要は非常に大きい。今ポリファーマシー対策には、多職種の視点が必要なのである。今回は、多職種で行うポリファーマシー対策として、医学・薬学的知識のみならず、多職種視点でできるアプローチについて、現場で役に立つような Tips を紹介できればと考えている。
主に医師対象
7. 家庭医療専門医のアイデンティティー
【演者】佐野 潔(米国財団法人野口医学研究所 理事長)
【概要】
家庭医療専攻医らがよく陥るアイデンティティークライシスについて、家庭医療の理解が弱いと陥りやすいものです。そして、学生らからよく聞かれる「家庭医療」「総合診療」って何ですかという質問に適切に答えられるか、あなたは自信がありますか?ただ「家族全体を診ます」とか「全て総合して診ます」では全く答えになりません。「迷える小羊達」を導いて将来の家庭医を増やしていくことが先達のミッションです。今回は敢えて、執拗に家庭医療の原点のお話をまたもやさせていただきました。45年も家庭医療をやっているとつくづく家庭医療やっててよかったと思います。その喜びをみなさんと分かち合いたいがため、朋友作りのために敢えてスライドを作りました。日本の家庭医療はまだまだ健在です、今時風に乗ってさらに発展させていきたいと願って今回お話をさせていただきます。
8. 事例から知る「メンタル不調者」への復職支援
【演者】夏目 誠(株式会社夏目こころのコンサルティング)
【概要】
「メンタル不調者」の職場復帰は企業にとって、大事なテーマです。代表的な疾患である「うつ病」と「適応障害」の“あるある事例”から、精神科主治医と産業保健チーム、特に産業医との判断の違いや連携について、お話します。また症状軽快だけでなく、復帰へのリハビリ(通勤練習や職場への挨拶、3-5 時間程度の作業練習など)の重要性も強調する。さらには職場関係者の対処についても具体例を示します。
漫画やイラストなどを豊富に使い、わかりやすく、お話します。多くの先生方の参加を期待しています。
9. プライマリ・ケア医のためのマイナーエジェンシー対応
【演者】宮道 亮輔(東京慈恵会医科大学 救急医学講座)
【概要】
たまに来院されるマイナーエマージェンシーを抱えた患者さんに自信を持って対応できますか?本講演では、プライマリ・ケアの現場でのマイナーエマージェンシー対応について解説します。基本的な内容は研修医の頃に習ったけど最近やっていないという方、習ったかどうかも覚えていないという方にお勧めです。
マイナーエマージェンシー領域はガイドラインなどの確立したエビデンスが乏しいことも多い領域です。各地方や医局ごとのルールもあると思います。
今回は、簡単に総論をお伝えした上で、各所で相談されることの多い、めまい、熱傷、鼻出血、スライス創、動物咬傷、眼外傷、肩関節脱臼、壊死性筋膜炎、肘内障についてオムニバス形式でお届けします。
確立したものから私個人のお勧めまで、多岐にわたる内容が登場しますので、お楽しみください。
10. 病状説明 ~ケースで学ぶハートとスキル~
【演者】天野 雅之(南奈良総合医療センター)
【概要】
本講演の目的は二つある。若手層に「説明の型」を伝え、病状説明への苦手意識を減らすこと。指導医層に「説明戦略を言語化する方法」を伝え、後輩教育の負担を減らすことだ。研修医は指導医の脳内にある戦略を知る機会がなく、専攻医は「見よう見まね」で不安を抱えながら実施し、結果的に個人のセンスに頼った非効率的な病状説明になりがちであった。筆者も病状説明で大いに苦労したが、家庭医療学とビジネススクールでの学びを生かし、病状説明を構造化した。本講演では、そのエッセンスをお伝えしたい。説明相手への配慮にあふれた「あたたかい病状説明」を、参加者の皆さんが再現性を持って実践できるお手伝いができれば幸いである。なお、普段は双方向的に行う内容を大幅に圧縮して講義形式にまとめたため、わかりづらい点も多々あろうと思われる。遠慮なく演者にメール等でご質問いただきたい。
11. 小児から成人への移行期医療
【演者】南條 浩輝(かがやきクリニック)
【概要】
2000 年代に小児在宅医療の必要性が高まり、近年は多職種によるサポート体制ができつつある。黎明期には「NICU 出口問題」といわれ、NICU 長期入院児を自宅に退院させたいという医療提供側の理由が強い側面もあったが、今は子どもと家族にとってのメリットを最大限活かす方策として位置づけられている。
移行期医療とは、小児期からの疾患を持って成人になった方への医療の在り方である。日本小児科学会の「小児期発症疾患を有する患者の移行期医医療に関する提言」には、3 パターンの移行期医療の形が例示されているので参照いただきたい。
小児在宅医療の推進から約 20 年が経過した今、当時赤ちゃんだった医療的ケア児は移行期に直面している。そして、約 20 年前に在宅医療へ「移行」を推進した時の課題が、そのまま小児から成人への「移行」の課題になっている。医療提供側の理由が強いと移行はうまく進まず、本人と家族にとってメリットの大きい移行期医療の形を考えねばならない。
そのためにプライマリ・ケア医の果たす役割は大きく、移行期医療を「ちょっとだけがんばる」方が増えてくれることを願っている。
12. オールインワン 経験症例を論文発表するTips
【演者】 見坂 恒明(神戸大学大学院医学研究科 医学教育学分野 地域医療支援学部門 特命教授/兵庫県立丹波医療センター 地域医療教育センター長)
【概要】
臨床研究に比し軽視されがちですが、医学研究においてケースレポートが果たす役割は大きく、臨床医学を切り拓いてきたのはケースレポートです。また、当学会学術集会において、学会発表後、発表演題が論文化される数が日本の他の学会と比べても極めて少ないことが指摘されてます。一方で、臨床研究に比し、ケースレポートは accept されるのが難しく、paper writingの腕の見せ所で、書き方の原則を知る必要があります。疾患頻度が「稀」なだけでは、論文化できません。どのような内容がケースレポート化できる症例なのかの提示を行います。その上で、論文の新規性について軸の設定の仕方の例示、また、実際ケースレポートをどのように書いていくのか書き方の原則を含めて解りやすく、実例を挙げながら、解説していきます。論文執筆経験がない方から、どのように指導してよいのかわからない方まで幅広い層にお役に立つ講演です。