学会運営を成功に導く つまずかないためのチェックポイントと効率化のコツ

2026年01月14日

はじめに

学会運営は、多くの関係者(事務局、運営会社、システム会社、印刷会社、学術委員など)が関わる複雑なプロジェクトです。準備期間から当日、事後処理に至るまで、様々なトラブルや非効率な作業が発生しがちです。

本ガイドでは、担当者が直面しがちな課題を明確にし、それらを乗り越えて効率的に運営を進めるための具体的なチェックポイントとコツを解説します。

学会担当者が直面する「三つの壁」

引き継ぎの壁

「去年どおりにやっておいて」と言われるものの、詳細な手順や情報が残されていない。

境界線の壁

多くの関係者が関わる中で、タスクの責任範囲が曖昧になってしまう。

納期の壁

準備を早く進めても、査読やプログラム編成に時間がかかり、最終的な納期が圧迫される。

学会運営を行う上で、この3つの壁が担当者様の忙しさに繋がり、前年踏襲のまま改善されない原因にもなっています。

 

現場で多発する「トラブルトップ5」と「未然防止策」

トラブル1:延滞・締め切りの延長ループ

【問題】運営側の「優しさ」から延長期間を繰り返すことで、参加者が「どうせ延長される」と認識する。

【防止策】

  • 裏の締め切りを設定し、公表しない
  • 一度しっかりと締め切り、延長する場合は個別対応とする
  • 勇気を持って「今年は受け付けない」と締め切りを区切る年を作る

トラブル2:システムの運用と管理における「できる」の解釈違い

【問題】システム会社と事務局の間で、「出来る」の意味が異なる認識になる。

【防止策】仕様決定前に、フロー図を確認し、お互いの認識に相違がないかを事前にチェックする。

トラブル3:請求書・領収書の再発行

【問題】宛名の間違いや紛失により、請求書や領収書の再発行が頻繁に発生する。

【防止策】マイページで参加者が自己発行できる仕組み(郵送の廃止)を導入する。
     データ配信にすることで、ミスが発生しても再発行の手間を軽減する。

トラブル4:メールの不達

【問題】セキュリティの強化(特にGmailなど)により、フリーメールにメールが届かないケースが増加している。

【防止策】重要連絡については、ホームページにも記載し、定期的な確認を促す、複数の連絡手段を併用(BCCの準備)する。

トラブル5:「言った言わない」問題

【問題】口頭ベースの指示ややり取りが多いと、後になって指示内容が異なっていたというトラブルが発生する。

【防止策】チャット、共有フォルダ、スプレッドシートなどを活用し、指示内容、対応者、対応状況の履歴をしっかりと残す。

 

崩してはいけない「成功の構造」

学会運営を行う上でブレてはいけない構造があります。

1

土台(財務)

何よりも重要なのは、予算の管理、契約内容、インボイス対応などの税務処理です。ここがしっかりしていないと、上物である柱は崩れてしまいます。

2

柱(学術・参加者・会場)

これらの要素は相互に依存しています。横の連携と土台の確認を常に意識することが、運営責任者の最も重要な仕事です。

これらのトラブルを避けるために以下の点を意識し、仕組みを作っていくことが重要です。

 

効率化のための具体的な指針と仕組みづくり

運営の指針の決定

多くのトラブルの要因は、個人の頑張りでカバーしようとしてしまう事や、責任の所在が曖昧になっている、事前のルール決めが不足している場合がほとんどです。

最初に「運営の指針」を固め仕組み化し、動かさないことが重要です。
以下の点は、募集開始前に明確化し、関係者全員で合意することでトラブルを減らし効率化させることができます。

!注意!「とりあえず募集開始してから考えよう」は修正コストが10倍かかります。

指針 具体的な内容
お金 参加費の課税・非課税、キャンセルポリシー(台風、体調不良の場合など)を明文化
実行委員と業者の「責任分界点(SOW)」の明確化
時間 デッドライン(印刷入稿日等)からのスケジュールの逆算
データの部分 個人情報、撮影・録音、発表データの二次利用の可否などを明確化

責任分解点(SOW)の明確化とは

業者に丸投げはNGです。外部の運営会社やシステム会社を使う場合、責任分界点の明確化が非常に重要です。

  • 業者は「提案や作業」はできるが、「決定権」はない
  • 誰がどのタスクを持ち、誰が誰に指示を出し、誰がボールを持つのかを明確化する

 

スケジュール管理のコツと「間の期間」

理想的なスケジュールは1年前から始まりますが、特に注意すべき「魔の期間」があります。

【一例】

魔の期間①

予算策定や業者選定が完了した後、数ヶ月の空白期間ができることがあります。この期間に内容を忘れたり、いざ動き出すときに予算やカスタマイズ期間のズレが発覚したりします。

魔の期間②

開催3ヶ月前のプログラム編成は、査読の遅れや座長の都合などにより、コントロールしにくい作業です。プログラム決定の遅れは、発表者の出張申請の遅れや参加者登録のためらい等を引き起こします。

 

スケジュールのコツ

十分なバッファ(予備期間)を持たせること。「査読期間は延びるもの」「先生方は忙しいもの」という前提で、余裕を持った日程を引くことが必須です。

情報のブラックボックス化を防ぐ「コマンドセンター」思考

運営に関わる人が増えると情報が分断されがちです。
事務局をコマンドセンターとして定義し、全ての情報を一元化します。

  • メールのCCに必ず事務局を入れる
  • 業者間だけのやり取りをさせず、必ず事務局を挟む
  • ファイルは必ず指定のクラウドフォルダにあるものとしURLを共有。メール添付は原則禁止
  • 定例会議を実施し、各担当者の進捗状況を共有し「ズレ」を早期に発見

 

開催1ヶ月前の最終確認チェックリストの作成

特に確認する5つのポイント

以下を開催前によく確認し、開催当日や開催後の円滑な運営やトラブル防止に繋げましょう。

ポイント 具体的な内容
金銭 課税・非課税、インボイス番号の最終確認
著作権

スライド撮影・SNS投稿の禁止/許可アナウンス原稿

危機管理 講師欠席や災害時の中止判断基準(誰が決めるのか)
IT環境 会場のWi-fi強度は十分か(参加者用と配信用が分けられているか)
人員 当日のスタッフの配置図と緊急連絡網(携帯番号一覧)の作成

 

前年踏襲を資産に変える「引き継ぎ術」

学会が終わった後、その経験を「資産」に変えることが、翌年以降の運営を楽にし、最高の効率化につながります。報告書だけでは引き継げない下記をしっかりと記録に残すことが重要です。

問い合わせログ

参加者からの質問をリスト化し、対応策と共に残す

フォルダ構成

来年も同じ構造で使えるように統一し、最新のファイルがどこにあるかを明確にする

業者評価

使ってみた業者の良い点、悪い点を率直に記載する

これらの指針を実践することで毎年少しずつ学会の運営が楽になり、より良いものになっていきます。

 

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